ネット上で評判が良かったので「エラスティック リーダーシップ」を早速読んでみました。

10章までが本編、以降はコラム形式になっており、本編についての感想です。

チームリーダーマニフェスト

チームリーダーマニフェストにこの本の論旨がまとまっています。
勝手に1行に要約してみます(勝手にまとめんな、と言う方はオリジナルを見てください)

チームの状態に応じてリーダーシップのモードやスタイルを柔軟に変えながら、ゆとり時間を使って人を育てつつ自己組織化したチームを作っていく

リーダーシップのスタイルを柔軟に変えると言うところがエラスティックの所以でしょうか。
現状から抜け出して新しいことに挑戦させたり、そのためのゆとり時間を確保するのもリーダーの役割で、それは最終的に自己組織化したチーム作りにつながっていきます。
「リーダーの役割は、会社に価値を提供することでは?」と、ありそうなツッコミについてはこう反論しています。

価値とはチームのスキルを育成することで自然に生じるものだ。人が成長すれば、スキルも増しますし、それによって提供する価値も増える。さらに重要なのは、成長すると、正しい行いに対するメンバーのこだわりや責任も増すのだ。そして忠誠心も育つ。

長期的に安定した成果を上げるには全体的なチームの底上げが必要だし、リーダーシップの話なのでこれはこれで正しいのではと思いました。
成果を上げるためのマネジメントは別にするでしょうし。

ちなみに、マネジメントとリーダーシップの違いを初めて深く考えた気がします。
日本的感覚だとマネージャの下にリーダーという構成なので、より理解しにくいですかね。

チームの状態、モード、リーダーシップのスタイル

この本では、チーム状態には3つのフェーズがあって、それぞれにマッチするモードとリーダーシップのスタイルがあるとしています。

チームの状態(フェーズ)あなたの反応(モード)リーダーシップのスタイル
サバイバルフェーズサバイバルモード指揮統制型
学習フェーズ学習モードコーチ
自己組織化フェーズ自己組織モードファシリテーション

自分のチームがどのフェーズなのかを意識していないと、ニーズを外したリーダーシップを適用して空回りすることになります。
言われてみれば、ゆとり時間を与えもせず無理な学習目標を与えてしまったり、自己組織化できている個人をマイクロマネジメントしてやる気を削いでしまうので今まで見聞きしたことを当てはめてみると納得できました。

以下、気になったキーワードを拾っていきます。

サバイバルモード中毒

残業や休日出勤で問題を解決していくことで自分がある種のヒーローのような錯覚に陥って、居心地の良ささえ感じてしまい抜け出そうとすら思わなくなる中毒性があると書かれています。
中毒というよりは感覚が麻痺してたり、ゆとり時間を得るための交渉を諦めている、という方が近いのかなと思いました。 ゆとり時間を確保するところが最大の難関でしょうか。

バス係数

バス係数とは、チームメンバーの何人がバスに轢かれたらチームが破綻するかの係数(チームGeekにも確か出てきた)
バスに轢かれるとまずい人がバス因子です。
確かに、初期のメンバーが残っていないプロジェクトなどでは、バス係数が1なんてこともザラでないでしょうか。
バス因子はチームをサバイバルモードに追いやる最も顕著な問題と筆者は言っています。
ペア作業や教育、指導、そのほか誰かの頭にあることをほかの人と共有することでバス因子を防ぐとしていますが、これをするにもゆとり時間がないとできないでしょう。

コミットメント言語

いつまでに何を終わらせるか、言質を与えた言い方をしようというものです。
人はどうしても「できない」という報告をしたくないので曖昧な言い方をしてしまうことに基づいています。
これは恐怖を与えるものではなく、個人の制御下にないものには約束できないはずなので、阻害要因など問題を早めに見つけるためのテクニックなのかなと思っています。 学習モード以降へ適用するものになります。

クリアリングミーティング

自己組織化フェーズでのテクニックです。

  • 今週うまくいかなかったこと何か?
  • あなたはそれに関して何をするつもりか?
  • 今週良かったことは何か?

チームメンバー全員に3つの質問をしていくことで、うまくいってないこと、仕事についてしまいこんでいいる悪い感情、共有すべき情報などチームの知っていることすべてを明らかにして、それに対処します。
この段階までいけたら、正にチームをファシリテートしていると言えそうです。

まとめ

読み終えてみて、以下の点が良いと感じました。

  • 今まで現場で何となく感じてたことが言語化、体系化されている
  • 内容が現実に即しており、アドバイスも具体的で実践できそうに思える内容である

アジャイル開発したいけど下地ができてないチームの前段としては取り入れると良いのではと思いました。 実践する前に本の内容をチームに共有して、共感を得られてからの方が良さそうです。