評判通りの良書でした。アドバイスが具体的かつ現実的だし、ここまで言語化できる著者はすごいです(脱帽)
オライリージャパン
本の目次
管理される側から始まって、CTOにいたるまでエンジニアとしてキャリアパスがステップ別に解説されています。
1章 マネジメントの基本
2章 メンタリング
3章 テックリード
4章 人の管理
5章 チームの管理
6章 複数チームの管理
7章 複数の管理者の管理
8章 経営幹部
9章 文化の構築
10章 まとめ
マネージャの大事な仕事、1on1とフィードバック(1章マネジメント)
「できる上司」に求められる2つの仕事ととして1on1とフィードバックが挙げられています。
1on1は部下との人間的なつながりを作ること、また要検討事項を相談する場として重要で、この本の中ではその重要性が終始説かれています。
ただし上司もエスパーではないので、管理される側も自分の求めることは自分で考え上司に伝えて
、自分に対する責任は自分で負うことが必要です。
優秀なテックリードとは(3章テックリード)
日本ではあまり馴染みない役職ですが、テックリードを1行で表現すると以下だそうです。
開発チームに対する責任を担っていて、最低でも自身の勤務時間の3割はチームと共にコードを書く作業に充てているリーダのこと。
うちの会社ではテックリードという職掌はないのですが、自分がやっている仕事と一番近いのでの興味深く読みました。
優秀なテックリードに必要なこととして、以下4点が挙げられています。
- アーキテクチャを把握している
- チームプレイの大切さを心得ている
- 技術的な意思決定を主導する
- コミュニケーションの達人である
システムを深く理解して、大局的な視点を持っていて、管理と技術のバランス、自分でやる作業とお願いする作業のバランスを取ることなどバランス感覚が求められる職種だなと思いました。
チームメンバーに尋ねる前にシステムから情報収集を(4章人の管理)
上司自身で容易に調べられることを部下に調べさせるのはチームの生産性にもメンバーの精神衛生上も良くないので止めましょう。
たとえ開発から離れていたとしても、BTSやコミットログなどの見方ぐらい覚えておけば済む話ですし、エンジニアが使ってるツールのことを理解しておくのは必要なことでしょう。
ブリリアントジャークへの対応(5章チームの管理)
ブリリアントジャークとは有能だが、自己中心的で周囲の人間攻撃するタイプのエンジニアのこと。 それへの対策が具体的で「好ましくない言動は、断固、公然と拒否する」と書かれています。 よく褒めるのは人前で、叱るのは個別にと言いますが、このケースはその場ですぐ注意し(ただし感情的になってはいけない)チームが守るべき基準を示すべき。 自分の経験上もこういう人の考え方をかえるのは難しいと思っていますが、筆者も変わることを望んでない人を変えるのはどだい無理なので、チームとメンバーそして管理者自身を守ることが大事と言っていて共感できました。
人を管理する道へ舵を切る前に、まずは十分時間をかけてプログラミングを完全にマスタしましょう(6章複数チームの管理)
技術に興味がなく勉強したくないのでマネージャの道を選択する、というケースが多いと思っています。
そういう人がマネージャになると本人も、部下も不幸だと思っています。
アメリカではマネージャの職務記述書に技術が必要と明記されており、
筆者もある程度時間を割いてコードを読んだりメンバーに説明してもらって理解することが必要と書いていて、そこが凄く納得いきました。
自分の会社の管理職の職務記述書に何と書かれているのか見てみると良いでしょう。
チームの生産性や満足度を予測するのに役立つ3つの質問(6章複数チームの管理)
- 会社から求められている自分の職務をきちんと把握しているか
- 自分の職務を遂行する上で必要な機器やツールを持っているか
- 毎日最高の仕事ができる機会を得ているか
具体的に開発チームの健全性を測る尺度としては下記3つが挙げられます。
- リリースの頻度
- コードのチェックインの頻度
- インシデントの発生頻度
過剰なミーティングやサポート業務、インシデント管理に忙殺されコードを書くのに集中できない状況は不健全ですので改善しないとまずいですね。
経験で培った独自の勘を拠り所に(7章複数管理者の管理)
技術部長の職務として 時流に乗り遅れず「技術的な勘」を磨く時間的投資のコツ。
- コードを読む
- 自分が疎い領域を学んで、その領域に詳しいエンジニアへ解説を仰ぐ
- ポストモーテムに同席する
- ソフトウェア開発のプロセスに関する業界のトレンドを常に把握する
- 社外でも技術的な人脈作りを
- 学びは決してやめてはならない
技術部長まで上り詰めても、やはりコードを理解し学び続けることは必要。
エンジニアでいる限り、一生学びを止めてはならないのです。
おわりに
エンジニアのマネジメントというピンポイントなテーマで、どの章も凄く刺さりました。
マネージャになりたい人はもちろん、マネジメントに進む気がない人も、エンジニアとしてのキャリアパスを一通り知るには良い本だと思いました。
恐らく、自分の中のマネージャー像とこの本で描かれているマネージャ像と違うのではないでしょうか。
マネージャになっても技術に疎くなる訳にはいかないこと(コーディングする時間は減るでしょうが)が当たり前になると良いなと思いました。
部下からこの本をプレゼントされたらやばいかな。